土地家屋調査士試験の最近の傾向が知りたい。
ここ10年で変わったことはあるの?
優先して勉強する部分はある?
そんな疑問にお答えします。
結論から言うと、難易度的には今も昔も大きな差はないです。ただ、頻出の論点などは存在するのでそのあたりのお話ができたらいいなと思っています。
どこが出るのかを分かっていたほうが効率よく勉強できますからね。
この記事で分かること
- 択一で頻出の論点
- 建物で出題された内容
- 土地で出題された内容
私は試験に一発合格をした現役の調査士です。
予備校などには通わず、最初から最後まで独学だったので試験については自力で調べまくっています。
その経験をもとにこの記事を書いています。
土地家屋調査士試験の近年の傾向まとめ
択一の出題傾向
択一は民法3問、不動産登記法16問、調査士法1問というパターンが定着しつつあります。ただ、調査士法が出されずに不動産登記法が17問である年もあります。
民法の出題内容
民法の頻出論点はズバリ「物権変動」ですね。ここをしっかり押さえておけば民法で点数が取りやすくなると思います。
土地家屋調査士試験で出題されるのは主に不動産に関係がある物権変動のお話です。
Aさんから家を譲ってもらったけど、AさんはBさんにもあげることにしてるっぽい。私にくれるって言ってたけどこの場合はどうなるの!?みたいな話です。
土地家屋調査士の仕事は土地や建物の売買と深い関係があるのでこのような問題がたくさん出題されます。
物権変動の他には相続や所有権の問題も結構多めです。
最近の民法は難しい?
予備校の講師の話を聞いていると最近の民法は難しくなっているという話がありますが、私の体感的には大きな変化はないと思います。
たまにすごくマニアックな問題が出ることがありますが、基本的には物権変動や所有権、相続の基礎知識があれば3問中2問は安定して取れるはずです。
あ、そうそう。民法が難しくなっているという話を聞いて民法の勉強を一生懸命やる人がいますが、たった3問しか出ない問題に大量の時間を使うのは非効率なので今すぐやめましょう。
10年分の過去問と答練くらいでOK。
参考:【民法改正】土地家屋調査士試験の民法はどうやって勉強する?
優先するべきは次で紹介する不動産登記法の方です。
不動産登記法の出題内容
不動産登記法というのは登記に関係がある法律のことです。
家を買ったら一か月以内に登記してね~とか、土地の種類が変わったら法務局に教えてね~みたいな決まりごとを法律にしたものです。
結論から言うとこの分野に関してはここ10年の出題傾向に大きな変化はないです。
一応、補足として不動産登記法の重要性を説明していきます。
ハッキリ言って、土地家屋調査士試験=不動産登記法の試験です。
実際に択一で出題される問題の8割が不動産登記法ですし、記述式の問題もこの法律を元に作られています。
なので、不動産登記法をしっかり勉強できれば試験には受かりやすいです。
申請の内容や申請義務者、筆界特定などは出題されることが多いし、記述式の問題でも使う知識なので覚えておく必要があります。
ただ、これらに限らず色んな内容をまんべんなく出してくるので、この部分を覚えておけば絶対受かる!!みたいなものはないです。
難易度的には「正確に覚えていれば解ける」くらいです。
暗記量は多めですが、基礎がガッチリ固まっていればそこまで難しくはないですね。
過去問がばっちりなら37.5/50点くらいは得点できます。
調査士法
不動産登記法と同様で、調査士法も出題傾向には大きな変更はないです。過去問の内容を覚えておけば得点できます。
ただ、調査士法は出る年と出ない年があります。出題される場合は第20問目に出てきますね。
土地家屋調査士として登録したいなら申請先はどこですか?みたいな内容です。
調査士法の問題って絶対に出題されるわけではないし、仮に出題されたとしても1問だけなので捨てる人もいますが、内容が割と易しいのでちゃんと勉強した方がいいですよ。
勉強時間は短めでもいいのでやったほうがいいです。択一の問題って1問あたり2.5点もありますからね。これを落とすのは結構痛いです。
記述式の出題傾向
建物
年度 | 記述式の出題内容 |
平成21年度 | 建物表題 |
平成22年度 | 建物合体 |
平成23年度 | 建物表題部変更 (附属建物は区分) |
平成24年度 | 区分建物表題(代位) |
平成25年度 | 建物表題部変更(主の取り壊し) +建物表題 |
平成26年度 | 区分建物変更(敷地権抹消) 建物表題(共用部分の規約廃止) 建物表題部変更・合併 |
平成27年度 | 建物区分 |
平成28年度 | 建物表題部変更(構造変更、増築) |
平成29年度 | 建物表題部変更(主の種類変更・附の新築) |
平成30年度 | 建物合体 |
令和元年度 | 区分建物表題 |
令和2年度 | 建物滅失登記・建物表題登記 |
令和3年度 | 建物区分 |
令和4年度 | 建物表題部変更(附→主へ合体・附の新築) |
令和5年度 | 区分建物表題部変更・区分合併登記 |
出題された登記の内容を表にしています。建物表題部変更登記がよく出ます。
表題登記もたまにありますが、その場合でも表題部変更登記が絡むようなパターンが多いですね。
区分建物はたまに出題されます。ちなみに区分建物は普通建物よりも難しいので、区分の年には合格率が下がる傾向にあります。
全体の難易度を見れば大きな変化はないですけどね。
ただ、申請書を2つ書かせるパターンがたまにあるので時間が足りない可能性があります。
出題内容の難易度自体はあまり変わらないのですが、計算量や書く量が多くなった印象はあります。
土地
年度 | 記述式の出題内容 |
平成21年度 | 地目変更+分筆 |
平成22年度 | 分筆(相続) |
平成23年度 | 表題 |
平成24年度 | 合筆 |
平成25年度 | 一部地目変更・分筆 |
平成26年度 | 分合筆(共有) |
平成27年度 | 一部地目変更・分筆 |
平成28年度 | 分合筆 |
平成29年度 | 地積更正・分筆 |
平成30年度 | 一部地目変更・分筆 |
令和元年度 | 地積更正・分筆 |
令和2年度 | 分合筆 |
令和3年度 | 分筆(代位・相続) |
令和4年度 | 一部地目変更・分筆 |
令和5年度 | 地目変更・合筆 |
これも表にしました。土地は分筆登記がかなり多いです。
とはいっても単純な分筆登記ではなくて、一部地目変更・分筆とか地積更正・分筆という感じで他の登記との複合パターンがほとんどです。
それから、たまに合筆が出ます。これも分筆や地積更正と合わせて出ることが多いです。(申請書は合筆・図面は分筆を書かせるパターンなど)
どのパターンが来るかは分からないので申請書の書き方をしっかりマスターしておけば点数が安定しますね。
あと、土地の場合も建物と同じで計算量を増やしているという印象です。
最近では関数電卓の複素数を使った計算ができるので計算の難易度がかなり下がっています。
複素数についてはこちらに詳しく書いています。
参考:【土地家屋調査士】複素数を使って最短で試験に合格する方法|F-789SG-SL(キャノン)
それに対応するために計算量を増やしたのではないかという専門家の意見がありますね。
解答に使う数学の公式や基礎知識には大きな変化はないです。
計算量が多いのはキツイですが早く解く練習をしておけば時間内に解き終えるはずです。
「説明しなさい」系の問題(論述)・穴埋め問題
土地も建物も「〇〇について説明しなさい」系の問題が定着していますね。
「筆界特定とは何ですか?説明しなさい」とか「区分建物の定義とは?説明しなさい」という問題が1問は出題されます。
出題される論点はバラバラなので対策がしにくいです。私はこれ系の問題はほとんど捨てていました。
また、穴埋め問題も出ます。用語を正確に書く必要があるので正確に覚えておきましょう。
これらの問題は過去問を解いても正解できるとは限らないので、他の勉強(択一の問題や申請書、図面)に時間を割いた方が賢いです。
まずは基本的な知識をつける
今回の記事はここまでです。
最近は土地家屋調査士試験が難しくなっているという話を聞きますが、私の体感的にはそこまで大きな変化はないように思います。
ネットで調べると昔より今の方が難しい!!と煽っている人がいますが、そのように感じるのはその人が勉強不足なだけです。
参考:昔の土地家屋調査士試験の方が難しいと言われる3つの理由《ただの勘違いです》
過去問や模試で基準点を超えるレベルになれば本試験でも普通に解けるはずです。あとはどれだけ正確に解けるかですね。
まずは択一の勉強で基礎をガッチリ固めて、記述式の問題をたくさん解いていくというのが基本的な勉強方法ですね。
参考:【土地家屋調査士試験】択一で逃げ切れ!合格できるベストな配点を経験者が解説
この試験は時間との闘いなので時間配分について知りたい人はこちらを参考にしてください。