境界確定測量とはどんな仕事なのか?
実際に調査士事務所や測量事務所、もしくは司法書士事務所に勤めている人ならば簡単に想像がつくと思いますが、一般的には全く知れ渡っていませんね。そもそも土地家屋調査士という職業自体がマイナーすぎるので当たり前なのですが…
家や土地の売買をしたことがある人なら必ずどこかでお世話になっているはずですが、あまり表に出てくる職業ではないので知名度は低いですね。ということで実際に調査士として働いている私が仕事内容を具体的に説明していきます。
今回は土地家屋調査士の仕事でおそらく一番多いであろう「境界確定測量」についてです。
境界確定測量とは?
例えば、自分が所有する土地を誰かに売りたいと思っている人がいるとします。この場合の相談先はたいていの場合は不動産会社です。
仲介契約を結んだ不動産会社は土地を買ってくれる人を探すわけですが、その場合に土地の面積をハッキリとさせておく必要があります。
謄本に載っている土地の面積(地積)というのは大昔に測ったものもあり、実際の土地の面積とは全く違うことが多いです。(多いか少ないかはケースバイケース)
買う側からすれば、自分が買う土地の面積はハッキリとさせておきたいですよね。土地というのは一生に一度の高価な買い物である場合が多く、曖昧な状態でポンとお金は出せません。
買った後に聞いていた面積より小さいと気づいたらムカつきますよね?訴訟レベルのトラブルが発生する可能性が高いです。
ということでここで土地家屋調査士の出番です。不動産会社や銀行などの仲介から土地家屋調査士に「この土地の境界をハッキリしてくれ」という依頼が来ます。土地の面積を決めるということはつまり、お隣さんとの境界をハッキリとさせるということでもあります。
境界が分からなければ、その土地がどこまで続いているのかが分からないし、当然面積を出すことなんてできません。このような土地の測量をすることを業界では「境界確定測量」といいます。
情報収集
境界確定測量の依頼を受けたらその土地の謄本、地積測量図、字図(地図)、市や県に備え付けの資料などを集めます。まずは情報収集からですね。
ちなみに、これらの資料は有料である場合がほとんどなので、実際に面積を測る前に、依頼者側から諸事情で調査を断念したとしても料金を払う必要があります。(大体1~2万円程度)
隣地挨拶
情報収集が終わったら、その資料を持って実際に現地に行ってみます。机上で考えるのも大事ですが、自分の目で確かめることも大事です。ここでお隣さんと偶然に出会えたらすかさず挨拶をしておきます。「隣地挨拶」と言ったりしますね。
後々、境界を確認してもらう際にお隣さんとの立合いが必要になるからです。ここでこちらのイメージを悪くしておくと、お隣さんも心に壁を作ってしまいます。なるべく笑顔で、明るく、丁寧に、を心がけましょうw
その日に会えなかった場合は後日、時間をずらして行ってみます。たいていの方は日中は仕事をしているので不在です。なので仕事から帰宅している時間(19~20時)くらいを狙ったりします。土地家屋調査士も相手主体の仕事なので、多少の残業は我慢です。
現地調査
隣地挨拶が大体済んだら、いよいよ現地調査に入っていきます。作業内容を細かく言ってもしょうがないのでざっくり説明します。
- 境界標識を探す(草を刈ったり、土を掘ることもある)
- 基準点を探す(三角基準点とか補助点とか。GPSの場合はいらない)
- 器械(トータルステーション)で実際に測量する
- 資料と現地の状況を見て、境界の場所を仮で出す(印をつける)
こんな感じですね。簡単に書きましたが、境界の場所を仮で出すまでには最短でも5日くらいはかかります。忙しい事務所だったらその現場ばかりに付きっ切りになれないのでもっとかかりますね。
簡単な土地だったら測量の日数も少ないのですが、100坪を超えるような土地や形状が複雑な土地などは器械を入れるのが大変なので、その分時間がかかります。デパートの跡地の測量なんかはマジで地獄です。
隣地立合い
現地調査が終わったら実際にお隣さんに立ち会ってもらって、こちらが決めた境界の場所を確認してもらいます。境界というのは利害関係があるものなので、どちらか一方が勝手に決められないのです。
何故この場所を境界と見なしたのかなど、素人の方にも分かりやすく説明し、納得してもらいます。納得してもらえたら、「ちゃんと確認しました!」という書類(筆界確認書や境界確認書などと言います)にサインと印鑑をもらいます。これを関係があるお隣さん全員分、繰り返します。
接する土地(=隣地)が多いとこの立会いの手間が増えるのでこちらが拘束される時間も増えます。地味ですが中々骨が折れますね~。
ちなみに道路は市や県(たまに国)の所有物であることがほとんどなので、市や県の職員との立ち合いも同時進行です。
境界標識の設置
境界標識というのは境界を決める印みたいなものですね。
こんなのです。これは金属標識ですね。金属プレートと言ったりもします。
これはコンクリート杭ですね。土に埋め込む時に使います。現地で境界の位置をハッキリさせておく必要があるのでこれらの境界標識を設置します。図面上とのズレは大体5mm前後です。
精密機械できちんと測量しながら、正確に設置します。
確定測量図の作成
境界標識の設置が終わったら「確定測量図」を作ります。この図面の通りに境界を決めましたよ~という最終的な図面です。非常に大事な図面なのでミスは許されません。
この図面を作成したら、市や県に提出し、きちんと精査された後に他の資料とまとめて製本された状態で戻ってきます。これで境界確定測量の作業は大体終わりですね。最後に今回の調査で得た資料をファイルなどに綺麗にまとめて依頼人に納品します。
境界確定測量の大変なところ
この作業の大変なところはたくさんありますね。まず外作業なので夏は地獄ですw大体2~3時間、長くて4~6時間くらいは現場作業をしているので汗だくになるし日焼けがヤバいです。
また、たいていの土地は草がボーボー生えているので虫が多いです。虫が嫌いな人は要注意です。逆に冬はめちゃくちゃ寒いですねw梅雨の時期は現場作業ができないので、晴れた日に一気に作業を進めます。
それ以外ではお隣さんが気難しい人だとカナリめんどくさいです。こちらを警戒して全く立合いをしてくれないパターンもあります。詐欺だと思われているんですよね。
ちょっとずつ懐柔していって最終的には書類にハンコを貰う必要があるので、イライラしても切れてはいけません。
こちらは立合いをお願いしている立場なので謙虚さが必要なんですよね。なのである程度はコミュニケーション能力が無いと厳しいです。
境界確定測量のメリット
ネガティブなことばかり言ってきましたが、いいことももちろんありますよ。なんといっても報酬が高いです。
日本土地家屋調査士会連合会の「報酬ガイド」によると、土地分筆登記(測量資料がない場合)の報酬額の全国平均は480,988円です。
測量資料がない分筆登記というのは、確定測量と分筆登記を同時に行う仕事になります。(資料がないので境界を全て測りなおす必要がある)
確定測量を単体で行う場合は30万~程度です。(報酬額は地域差があるので注意)
調査士事務所で働いているなら別ですが、独立開業をしている場合は月に2件の境界確定測量をするだけでも十分に食べていけます。
今回は境界確定測量について説明しました。土地家屋調査士の主な仕事の内の一つですがざっくりとしたイメージはつきましたか?これから土地家屋調査士試験を受ける人のお役に立てれば幸いです。
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