測量業界への転職を希望する場合、「測量士」または「測量士補」の資格取得を目指す人も多いと思います。
そんな人のために、この記事では測量士と測量士補の違いについて詳しく解説していきます。
この記事で分かること
- 業務内容や需要の違い
- それぞれの資格の取得方法や難易度
- 測量士のほうが将来性がある理由
この記事を書いているのは現役の土地家屋調査士です。測量に携わっている私が、業界の実情や勉強方法などを詳しく解説します。
業務内容の違い
法律ではこのように定められています。
- 測量士は、測量に関する計画を作製、または実施をする
- 測量士補は、測量士の作製した計画に従い測量をする
法律上は、測量士補は測量士のサポート役という立場になります。
ちなみに測量業務を行う者は測量士補か測量士の資格者である必要があるのですが、実際の現場では無資格で活躍している人は多いです。
ですので、無資格だから測量業界へ転職できないということはありません。
ただし、将来的に独立開業を目指すなら測量士の資格が必須です。測量士補ではダメです。
測量業者として開業する際に最低一人は測量士を配置する必要があるからです。
また、公共入札案件では在籍している測量士の人数による制限があるので、測量士を採用するほうが測量会社にとってはメリットがあります。
需要の違いはある?
後述しますが、測量士補よりも測量士のほうが難易度が高いです。
ですので、測量士補よりも測量士のほうが需要がありそうですが、実際はどちらも需要があります。
というのも、常に人手不足な測量業者が多いため、体力がある男性なら無資格でも需要があるのです。
地域差があるかもしれませんが、一年中、求人を出している業者も多く見かけます。
というわけで、転職が目的ならどちらの資格でもOKです。ただし、面接時の評価で言えば測量士のほうがかなり上です。
測量士補は誰でも取れるので、特別な評価はされません。ハッキリ言えば、就職やキャリアアップを狙う目的なら測量士補を取得する意味はあまりありません。
実際の現場では資格の有無より実務経験やスキルに応じて待遇が違うので、単純に測量会社に就職したいだけなら、さっさと求人に応募したほうがいいです。
ちなみに業界の年齢層は40~50代が多いです。30代だと若手の部類に入りますね。
測量士・測量士補の取得方法
測量士の取得方法
測量士の資格取得には、測量士の国家試験に合格して取得する方法と試験を受けずに取得する方法の2通りがあります。
- 測量士の国家試験を受ける
- 認定学校(専門学校や大学)を卒業し、測量士補を取得する。その後、実務経験を積んだ後に申請をして測量士を取得(試験は受けない)
簡単に言うと、「1.測量士補を試験で取得した場合は、測量士も試験で取得する」「2.学校を卒業し、測量士補を取得した人は実務経験を積めば申請で測量士が取得できる」・・・という認識です。
測量士補の取得方法
測量士補も測量士と同様で、国家試験に合格して取得する方法と試験を受けずに取得する方法の2通りがあります。
- 測量士補試験に合格
- 認定学校を卒業
- 専門の養成施設で1年以上、必要な専門知識および技能を修得
土木関係の学校に行っている人は授業の一環で測量士補の資格を取得することが多いです。詳しく知りたい人はこちらのサイトを参考にしてください。
参考:測量士(補)とは
合格率と出題形式
まずは合格率から。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
---|---|---|---|---|---|
測量士 | 10.4% | 11.7% | 8.3% | 14.8% | 7.7% |
測量士補 | 35.9% | 47.3% | 33.6% | 35.8% | 30.3% |
続いて出題形式です。
資格名 | 出題形式 |
---|---|
測量士 | 午前:択一式(28問) 午後:記述式で必須1題と選択4題のうち2題を選択 |
測量士補 | 択一式(28問) |
測量士補試験は択一式(マーク式)の問題のみですが、測量士試験は択一式に加えて記述式の問題が出題されます。
また、測量士試験は午前~夕方まで行われますが、測量士補試験は午後~夕方のみです。
ちなみに測量士試験では電卓が使えますが、測量士補試験は電卓の使用は禁止されているので手計算になります。
勉強方法の違い
どちらも過去問を繰り返すことが重要です。
測量士補の場合、市販の問題集や無料の解説動画があるので独学での勉強が比較的簡単です。
ですが、測量士は市販のテキストや問題集が書店では買えません。
一応、日本測量協会から分厚いテキストと過去問が販売されているのですが、解説が堅苦しいので読むと眠くなってきます。しかもかなり専門的で分かりにくいです。
また、測量士補に比べて測量士の数学の問題は難易度が大幅にアップしています。分かりやすい解説書もないし、ネットで調べてもあまり情報がありません。
つまり、測量士は独学での勉強がやりにくいのです。
ですので、下記の特徴に該当する人は資格予備校で勉強することをオススメします。
測量士試験の勉強で予備校を使うべき人
- 2~3か月の勉強期間で合格を狙う人
- 数学が苦手な人
- 測量士補試験にまぐれで合格した人
- 専門的なテキストを読むのが苦手な人
- 測量に関する知識がない人
もちろん、測量士の独学が不可能なわけではなく、未経験からでも一発合格する人はいます。
ただし、テキストベースで勉強をすると現場作業の流れがつかみにくいです。なので、未経験の人は最初は苦労すると思います。
測量士補で勉強した知識は測量士の勉強でも使えるので、測量士補→測量士の流れで取得する人が多いですが、いきなり測量士に挑戦することも不可能ではないです。
将来性を考えるなら測量士を取得するべき
ここまでのまとめ
- 測量会社に転職することが目的なら資格の差はあまりないかも
- 測量士補は独学が簡単。測量士は独学がしにくい
ざっとこんな感じですね。
ぶっちゃけ、測量士補は学校の授業の一環で仕方なく受けるか、土地家屋調査士試験の午前の部を免除するために受けるくらいです。これらの理由以外で測量士補を取得するメリットはありません。
対して、測量士の場合は独立開業をする際に必須です。ですので、将来性を考えるならば測量士の取得を目指しましょう。
測量士を取得するメリット
- 将来的には測量士として独立開業できる
- 測量士・土地家屋調査士のダブルライセンスで仕事の幅が広がる
- 土地家屋調査士試験の午前の部が免除される(これは測量士補でもOK)
もちろん、測量士補に合格した後や実際に測量会社に転職したあとに測量士の取得を目指してもいいです。
ですが、測量会社は忙しいところが多いので働きながら勉強するとなると結構キツイかもしれません。勉強期間は2ヵ月~半年くらい必要なので、試験前には仕事以外は勉強漬けになることを覚悟しましょう。
詳しい勉強方法についてはこちらを参考にしてください。
ちなみに測量をする資格としては土地家屋調査士もあります。それぞれの資格をまとめるとこんな感じ。(個人的見解です)
◆知名度
測量士補 < 土地家屋調査士 < 測量士
◆世間体
測量士補 < 測量士 < 土地家屋調査士
◆試験の難易度
測量士補 < 測量士 < 土地家屋調査士
土地家屋調査士と測量士を持っていると交友関係が広がるので独立開業をした際に役に立ちます。
ダブルライセンスを狙うなら、測量士→土地家屋調査士の順で資格取得を目指しましょう。
測量士試験の合格者は土地家屋調査士試験の午前の部が免除されるので効率がいいです。
土地家屋調査士について知りたい人はこちらをどうぞ。
参考:【土地家屋調査士】試験合格・独立開業までのロードマップ《初心者向け》
今回の記事はここまでです。