
- 「民法の範囲が広すぎて、どこまでやればいいか分からない」
- 「宅建のテキストを使っているが、本当に足りるのか不安」
- 「司法書士のテキストまで手を出さないとダメ?」
土地家屋調査士試験を独学で目指す人ほど、この「民法の樹海」で迷子になります。
結論から言います。
土地家屋調査士試験の民法は「範囲を絞って、その範囲だけは満点を狙う」のが正解です。
現代の試験は「努力量」ではなく、努力の方向が合っているかをシビアに選別する試験だからです。
私は宅建(権利関係満点)、行政書士資格も保有していますが、調査士試験の民法に関しては徹底して「出る範囲だけを固め、それ以外は捨てる」戦略を貫きました。
この記事では、最短合格のための「民法の捨て方と拾い方」を解説します。
- 土地家屋調査士試験における民法の「正しい位置づけ」
- 最短合格のために民法で捨てていい範囲と絶対死守する範囲
- 独学者が民法で時間を溶かす「3つの沼」と脱出ルート
そもそも土地家屋調査士試験における民法とは?
土地家屋調査士試験は、全20問の択一式のうち、民法はわずか3問しか出題されません。
「たった3問なら捨ててもいいのでは?」と思うかもしれませんが、それは危険です。
なぜなら、民法は記述式を解くための「前提ルール」だからです。
民法の判断(特に相続・共有)を誤ると、記述式の「申請人」や「持分」を間違えます。
座標計算や図面が完璧でも、申請人が違えば大幅減点は避けられず、不合格に直結します。
つまり、調査士試験の民法は、
- 択一式で点を稼ぐためだけの科目ではない
- 記述式で「大減点」を食らわないための防具である
という認識を持つことが、最短合格への第一歩です。
なお、択一式という枠組みで見ても、民法よりはるかに重要なのは「不動産登記法」です。
不動産登記法を理解して初めて、記述式の問題文や申請書が「意味のある日本語」として読めるようになります。
民法に時間を使いすぎると、記述式以前に、不動産登記法の勉強時間が確保できなくなる。
これが、独学者がハマる最大の落とし穴です。
【結論】この3分野以外は捨てる勇気を持て
では、具体的にどこをやればいいのか。勉強するのは、以下の3分野だけでOKです。
- 総則
(時効・代理・意思表示) - 物権
(共有・所有権界・相隣関係) - 相続
(相続分・遺産分割)
これらは実務でも毎日使う知識であり、記述式試験でも頻出です。
逆に言えば、債権(売買・賃貸借など)や家族法(婚姻・養子縁組など)は、深入り厳禁です。
「満点」か「捨て」か?正しい目標設定
ここで誤解してほしくないのが、「3問中1問は捨てていい(最初から2問狙いでいい)」という意味ではないということです。
基準点を超えるライバルたちは、上記の「頻出3分野」に関しては、過去問レベルを完璧に仕上げてきます。
ここで差をつけられないよう、頻出分野に関しては「満点」を狙う必要があります。
私のスタンス(推奨):
- 基本戦略:頻出3分野の過去問レベルは完璧にし、3問正解(満点)を取りに行く。
- リスク管理:見たこともない奇問が出たら、そこで満点に固執せず潔く失点を受け入れる(結果2/3問でも合格できるメンタルを持つ)。
「満点は狙うが、満点に固執するために範囲を広げない」。これが最もコスパの良い戦い方です。
独学者がハマる「民法3大トラップ」
トラップ① 宅建テキストを「最初から読む」
初学者が宅建のテキストを代用すること自体は悪くありません。(調査士試験のテキストは選択肢が限られているため)
ただし、「最初から最後まで読む」のは絶対にNGです。
宅建の範囲は調査士試験にとってオーバースペックです。
使うなら、目次を見て「上記の3分野(総則・物権・相続)」以外をホッチキスで留めて開かなくするくらいの荒療治が必要です。
トラップ② 判例・学説の深追い(私の失敗談)
私は宅建試験で民法(権利関係)は満点でしたし、行政書士資格も持っています。
それでも、土地家屋調査士の本試験では、民法を1問落としています。
私が間違えたその1問について、後日、知人の司法書士2名に意見を聞いたところ、なんと2人の意見も割れました。
法律のプロですら判断が割れる問題を、調査士の受験生が解けるわけがありません。
この経験からも言えるのは、「過去問レベルを超えた深追いは、時間対効果が最悪である」ということです。
トラップ③ 有名講師推奨でも「司法書士テキスト」には手を出すな
ここが最大の落とし穴です。
「司法書士試験のテキストを使って、ここだけ勉強しよう」というアドバイスを見かけますが、独学者にとってこれは「終わりのない沼」です。
細かい判例や学説まで網羅されたテキストに足を踏み入れると、メインであるはずの「不動産登記法」や「記述式」に使う時間が消滅します。
【解決策】これが最短合格への「黄金ルート」だ
では、未知の論点や新傾向の問題にはどう対策すればいいのか?
テキストを読み込むのではなく、以下のルートで進めるのがベストです。
合格への黄金ルート:
- STEP1:過去問を8割仕上げる
まずは頻出3分野の過去問を解きまくり、基礎知識を固めます。 - STEP2:一旦、民法を離れる
民法が完璧でなくても、配点の高い「不動産登記法」→「調査士法」→「記述式」へ進みます。 - STEP3:「答練」で未知の論点を補完する
記述式の練習も兼ねて、予備校の「答練(模擬試験)」を活用します。
予備校の答練は、プロが「今年出そうな論点」を徹底的に分析して作っています。
分厚いテキストを読み込むより、「答練に出題された論点だけを、その都度頭に叩き込む」方が、圧倒的に効率が良いのです。
独学者が合格できない最大の理由は「努力不足」ではありません。
努力の順番を間違えているだけです。
この順番さえ守れば、民法は「足を引っ張る科目」ではなく、記述式を守るための最低限の盾になります。
民法の「勉強法」と「解き方」
初学者は「マンガ」から入るのもアリ
「まずは過去問」と言われても、法律初学者にとって、いきなり条文や過去問を読むのは苦痛です。
挫折するくらいなら、最初は「マンガでわかる民法」のような書籍で全体像をつかむのが近道です。
(※もちろん、読むのは3分野だけです!)
本試験での解き方:必ず「図」を描く
民法は暗記科目ではなく、「状況整理」の科目です。
本試験で民法を解く際は、必ず問題文を図式化(A→Bなど)し、時系列を整理してください。
特に「物権変動」や「相続」は、頭の中だけで処理しようとするとプロでも間違えます。
まとめ:メリハリこそが合格への鍵
土地家屋調査士試験において、民法は主役ではありません。
あくまで「不動産登記法」と「記述式」を輝かせるための脇役です。
- 頻出3分野(総則・物権・相続)は、過去問レベルを完璧にして満点を狙う
- それ以外のニッチな論点は潔く捨てる
- 未知の論点は「答練」で補い、浮いた時間は記述式に全振りする
この「割り切り」ができるかどうかが、短期合格の分かれ道です。
完璧主義を捨てて、合格点を取りに行きましょう。

