
土地家屋調査士に興味はあるものの、自分に向いている仕事なのか分からないと不安に感じている人は多いと思います。
資格を取るまでに時間も労力もかかる以上、「向いていなかったらどうしよう」と考えるのは当然です。
この記事では、雇われ・独立に関係なく共通する「仕事としての適性」を中心に、土地家屋調査士に向いている人・向いていない人の特徴を、現役の立場から率直に解説します。
なお、独立を目指す場合に追加で求められる現実についても最後に触れますが、まずはこの仕事そのものが自分に合うかどうかを判断してください。
雇われ・独立の両方を経験した立場から、現場の「泥臭いリアル」をベースに解説しています。
まず前提:雇われでも独立でも仕事内容は同じ
- 現場での測量・立会い
- 事務所での図面・申請書類の作成
- 依頼者や隣接地、役所とのやり取り
独立すると仕事内容が変わるのではなく、責任と判断をすべて自分で背負う働き方になるだけです。
土地家屋調査士に共通して必要な適性
運転ができる(必須)
役所も現場も、基本はすべて「車移動」です。
狭い道、交通量の多い市街地、知らない土地、高速道路。あらゆる場所へ自分で運転して向かう必要があります。雇われの場合も、募集要項に「普通自動車免許必須」とあるのが一般的です。
ペーパードライバーは致命的ではありませんが、慣れるまでは大変です。極端に運転が嫌い、という人はかなり厳しいでしょう。
コミュニケーション能力が最低限あるか
「うまく話せない」「緊張しやすい」だけがコミュ障ではありません。私が現場で見てきた「本当の意味で向いていないコミュ障」には2つのパターンがあります。
1. とにかく高圧的な人(下手に出られない)
かつての同僚に、話し方が高圧的で初対面の人にも威圧感を与えてしまう人がいました。仕事はできても、立会いのたびに「話し方が怖い」と事務所にクレームが入ります。気が強い隣人と「バチバチのバトル」になり、仕事が長期化することも珍しくありませんでした。
2. 分かりやすく説明できない人(専門用語を多用する)
隣地の方は登記や測量の素人です。それなのに「ここは14条地図が〜」「世界測地系の座標で〜」と難しい用語で説明してしまい、「あんたの説明はさっぱり分からん!」と不信感を持たれるケース。結局、事務所の代表が毎回同行する羽目になっていました。
仕事内容のイメージをもっと具体的にしたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
参考:土地家屋調査士の仕事内容と報酬相場|年収の現実・稼げる目安
電話対応は想像以上に多い
役所、隣人、銀行、ハウスメーカー……。とにかく1日中、電話に追いかけられます。
この仕事の「あるある」ですが、事務作業が一段落して「さあ、一息つこう」と目をつむった瞬間に電話が鳴ります。本当に「どこかで監視カメラで見られているのか?」と思うほど、タイミング良く(悪く)かかってくるのです。繁忙期ともなれば、文字通り「ホッと一息つく時間」すらありません。
参考までに、私の平均的な1日の対応件数(発着信の合計)は20〜30件ほど。繁忙期のピーク時になれば、1日で40件を超える電話を捌くこともあります。これに加えてLINEやChatwork、メールの返信が雪崩のように押し寄せます。
「静かな環境で、誰にも邪魔されず一つの作業に没頭したい」という職人タイプの方には、この断続的に集中をブツ切りにされる環境は、かなりの適性が問われるポイントです。
独立すると“追加で必須になる適性”
営業力は必須(避けて通れない)
飛び込み営業ではありませんが、紹介を生み出すために人と関係を作り続ける力は必須です。ここを放棄すると仕事が枯渇します。
仕事がない不安に耐えるメンタル
「このまま仕事が来なかったらどうしよう」というプレッシャー。
土地家屋調査士は、暇な時期でも会費やリース代などで毎月10万円以上の固定費がかかります。独立初期はマイナスになる月も普通にあります。
「忙しい時は休みたくなるが、暇になると不安で眠れない」。この感覚は独立8年目の今でも完全には消えません。家族を養っているならなおさらです。このプレッシャーと付き合っていく覚悟が必要です。
独立後の「お金」のシビアな現実については、私の売上推移を公開しています。
参考:【土地家屋調査士】年収1000万は可能?売上推移と「手残り」の現実
それでも迷う人へ|後悔しない判断方法
まずは補助者として現場を経験し、「この仕事ならやれそうだ」と思えたら次に進めば十分です。向き不向きは、実際に現場の空気を吸えばすぐに分かります。
まとめ:向いているかは3点で決まる
- 車の運転(どこへでも行けるか)
- 最低限のやり取り(威圧せず、素人に分かりやすく話せるか)
- 自営業のプレッシャー(固定費と不安に耐えられるか)
YESなら次へ。
NOなら撤退しても正解。

