
土地家屋調査士を目指していると、ふと迷うのが「他にも資格を取った方がいいのか?」という点です。
- ダブルライセンス(兼業)で仕事は増える?
- 相性がいい資格はどれ?
- 取るなら順番は?
この疑問に、現役の土地家屋調査士として現場目線で答えます。
結論から言うと、「相性がいい資格は存在する」が、むやみに増やすほど強くなるわけではありません。
土地家屋調査士は、資格そのものよりも導線(誰から・何の流れで依頼が来るか)と連携(紹介の循環)で伸びやすい仕事です。
【結論】相性がいいのは「行政書士」「司法書士」。ただし“目的”で選ぶ
- いちばん現実的:行政書士(許認可・相続周りの相談を起点に案件がつながりやすい)
- 最強だが難関:司法書士(相続・売買の登記導線と相性が抜群。ただし勉強負荷が大きい)
- 補助的に効く:宅建士・建築士(案件理解や提案の幅が広がるが、兼業運用は設計が必要)
- 「午前免除目的」なら:測量士補(ただし“仕事の幅”が直ちに増えるとは限らない)
- 必須ではない:簿記(会計の理解は役立つが、業務上の必須ではない)
資格を増やすべきか迷ったときは、「何ができるか」よりも“どう仕事がつながるか”で判断するのが結局いちばん堅実です。この記事では、相性の良し悪しと、現実的な選び方を整理します。
最初に押さえる:ダブルライセンスは「導線」があると強い
土地家屋調査士の仕事は、単体でも十分成立します。
ただしダブルライセンスが効くのは、次のような依頼の流れが自然に発生する場面です。
- 「測量の次」が決まっている案件(相続、売買、農地転用、開発など)
- 相談から入る案件(「これって誰に頼めば?」から一括で交通整理できる)
- 士業連携が前提の案件(司法書士・税理士・行政書士などと循環しやすい)
- 目的が言語化できないなら取らない。(「どんな導線を増やすか」が曖昧だと回収しにくい)
- 今の業務が回っていないなら、先に営業・連携を整える。(資格追加より紹介ルートの方が効くことが多い)
- “全部自分でやる前提”で考えない。(得意分野だけ受任し、他は信頼できる士業へ回す方が安全)
- 学習時間を削って本業が弱るなら本末転倒。(独立直後ほど「資格」より「実務の回転」が優先)
- 維持コストまで想像できないなら保留。(登録・更新・法改正の追随まで含めて運用できるか)
前提:資格が増えるほど「自動で稼げる」わけではない
ただ資格を持っているだけでは宝の持ち腐れです。その資格をどのように活かすのかを明確にしておきましょう。
- 雇われで働く場合
面接時には箔がついて有利になりやすいです。ただ、その後その事務所でダブルライセンスを活かせるかは、その人次第です。 - 土地家屋調査士として独立する場合
結局、ダブルライセンスを活かして仕事を回せる力や、それぞれの間口が広くないと、ほぼ無意味になりがちです。実際、ダブルライセンスどころかトリプルライセンス持ちの人もいますが、すべての資格を活かしきれるかどうかは、その人次第です。どの資格でも営業次第な部分はありますが、たくさん資格を持ってそれを活かして自分だけで稼ぐなら、それぞれの分野で相応の知識が必要です。具体的には、士業の研修会などに積極的に参加したり、飲み会などで先輩士業から実務の話を聞いておくなど。
ただ、試験に合格して登録するだけでは仕事は来ません。
相性がいい資格①:行政書士(現実的に“つながる”)
土地家屋調査士と行政書士は、実務でつながる場面が多いです。
典型は「測量 → 農地転用」や「相続 → 確定測量」ですが、実際はそれだけではありません。
依頼人から「行政書士も持っているなら…」が起きる
私自身、もともと行政書士として業務に関わっていた経緯があります。
土地家屋調査士として動き始めると、依頼人に名刺を渡したタイミングで、
- 「行政書士も持っているなら、これも相談できる?」
- 「この手続、どこに頼めばいい?」
といった形で相談が広がることが少なくありません。
すべて自分で受けない。“回す力”が仕事を増やす
行政書士業務は範囲が広いので、未経験分野を無理に受ける必要はありません。
むしろ、信頼できる先生に回すことで持ちつ持たれつの循環が生まれます。
- 行政書士案件を詳しい先生へ紹介する
- 結果として、その先生から測量・表題部の相談が戻ってくる
独立開業するなら、この循環は非常に強い武器になります。
相性がいい資格②:司法書士(強い。ただし“取る”のは重い)
土地家屋調査士が表題部、司法書士が権利部。役割が補完関係なので、実務の相性は抜群です。
相続・売買の現場では、
- 登記を進める前に、地積・地目・建物表題部を整えたい
- 境界や敷地の状態をはっきりさせてから権利登記へ入りたい
という需要が頻繁に発生します。
「取るより連携で勝てる」現実もある
実務上は、司法書士資格を“自分で取らなくても”強い関係性を作れます。
紹介の往復ができる司法書士がいるだけで、仕事の入り方が変わります。
それでも取るなら、覚悟が必要
司法書士は難関で、勉強負荷も大きいです。
「調査士も司法書士も未経験」から同時に追うのは、現実的にかなり厳しいケースが多いので、基本はどちらかを先に固める方が堅実です。
(補足)女性調査士×司法書士が強い理由
私の周囲でも、ダブルライセンス(司法書士×調査士)の女性は一定数います。
傾向として、土地よりも建物寄りに寄せる方が多い印象です。理由は単純で、現場拘束が比較的短く、報酬設計もしやすいからです。
もちろん個人差はありますが、ライフスタイル設計まで含めて考えると、現実的な選択肢になります。
相性がいい資格③:宅地建物取引士(「理解」と「提案」が強くなる)
宅建士は、調査士業務の“隣”にある知識です。売買・重要事項説明・契約実務の感覚が入ると、依頼人や不動産業者との会話がスムーズになります。
- 売買の現場で「何がリスクか」が見えやすくなる
- 測量・境界の説明が「取引の言葉」に翻訳できる
ただし、宅建試験は調査士試験と時期が近く(年によっては重なりもある)、同年の“ダブル受験”は計画性が必要です。
相性がいい資格④:建築士(運用できるなら強いが、設計が必要)
建築士は、建物の現場・図面・役所との折衝と親和性があります。
ただし一人で全部を抱えるとオーバーワークになりやすいので、
- 事務所として分業体制を組む
- 主軸(調査士 or 建築)を決めて補助線として使う
といった運用設計が前提になります。
「午前免除目的」なら:測量士補(仕事の幅とは別問題)
測量士補は、午前免除の観点で検討されることが多い資格です。
ただし、「資格を取れば仕事が増える」というより、受験戦略や経歴設計の一部として捉える方がズレません。
よく聞かれるが必須ではない:簿記(“理解”は役立つが、資格としては不要寄り)
「土地家屋調査士 簿記」で検索する方がいるのは、独立後の会計が不安だからだと思います。
結論としては、簿記の知識があると確かに助かりますが、資格として必須ではありません。
押さえるなら、資格の勉強よりも次の“実務で損しないライン”が先です。
- 経費・固定資産・減価償却の基本
- 売上の計上タイミング(入金・請求・未収の感覚)
- 会計ソフトの入力と、仕訳の意味が最低限読めること
分からない点は税理士や税務署に確認できますし、日々会計ソフトを触っていれば運用は可能です。
簿記は「興味が出たら」でも遅くありません。
相性が悪い(優先度が低い)資格の目安
相性が悪いというより、調査士業務の導線に直結しにくい資格は、後回しで問題ありません。
- 社労士(業務導線が別で、相互送客を作るには工夫が必要)
- 公認会計士など(難易度が高く、目的が明確でないと回収が難しい)
- 事務系の資格(実務ではツール習熟の方が効果が出やすい)
まとめ:資格を増やすなら「導線が増える順」で考える
土地家屋調査士のダブルライセンスは、闇雲に増やすほど強くなるものではありません。
導線(案件の流れ)と連携(紹介の循環)が作れる組み合わせから選ぶのが堅実です。
- 現実的に伸ばしやすい:行政書士
- 強いが重い(連携でも十分強い):司法書士
- 補助線として効く:宅建士・建築士・測量士補
- 必須ではない:簿記

