
- 土地家屋調査士の資格を取れば、副業でも稼げる?
- 会社員のまま、土日だけで調査士業務を回せる?
- 有休や平日休みで対応すれば何とかなる?
この記事では、このような疑問に答えます。
【結論】会社員の「副業(=週末だけ受託して稼ぐ)」は、ほぼ無理です
- スケジュールが回らない:平日対応(電話・役所・調整・補正)が必ず挟まる
- 固定費が重い:件数が少ない副業だと回収が難しい
- 仕事は「信用」で回る:レスポ・納期・連絡・実務力が揃わないと紹介が続かない
- ただし例外あり:士業との兼業/平日稼働できる働き方/補助者としての副収入は別ルート
この手のテーマは、ネット上だと「できる/できない」だけで終わりがちです。
この記事では、会社員の副業としてなぜ回りにくいのかを実務の流れで整理しつつ、現実的なルート(兼業・雇われ・補助者)もまとめます。
先に用語を整理(副業・兼業・補助者)
- 副業:会社員のまま、週末など限られた時間で「受託して稼ぐ」
- 兼業:本業と土地家屋調査士業務を同時進行で回す(士業・自営業・フリーランス等)
- 補助者:土地家屋調査士事務所等で、現場・内業の補助として働く(資格者の受託とは別ルート)
土地家屋調査士を副業にできない理由
スケジュール的に回らない(有休や平日休みでは足りない)
副業として土地家屋調査士で稼ぐ場合、本業が休みの日に調査士業務を進めることになります。
ただ、土地家屋調査士の仕事は「土日だけで完結」しにくいのが現実です。理由はシンプルで、仕事の途中に平日対応が必ず挟まるからです。
たとえば、現場に出る機会が比較的少ない建物案件でも、1件回すだけで次のような平日対応が発生します。
- 依頼人(取引先)からの電話:基本は早めの折り返しが前提
- 申請人からの電話:こちらの都合より相手の都合に合わせることが多い
- 役所からの電話:平日に入る
- 役所への申請・受け取り:郵送対応も可能な場面はあるが、近場なら出向くのが基本(急ぎ案件ほど遅れが致命的)
ここで厄介なのは、これらが予定通りに発生するとは限らないことです。相手都合で飛び込んでくるので、有休や平日休みを「必要な分だけ取る」という発想では間に合いません。
「有休で対応すれば?」が成立しない具体例
有休や平日休みで「まとめて処理」する発想だと回りません。
- 平日対応は分散して発生する(折り返し・確認・調整が飛び込む)
- 補正は予測不能で、期限つきで動く必要がある
- 「次の休み」では遅い=納期が延び、信用に直撃しやすい
建物でも、補正の一例としてこういうことが起こります。
- 登記官から「この部分の写真を追加で提出してほしい」と言われる
- 写真が不足していたら、追加で撮りに行く必要がある(遠方でも同じ)
- 「次の休みに行きます」では遅く、結果として依頼人の信用を落とす
土地の案件(特に境界確定が絡む)になると、さらに難易度が上がります。
- 境界確定の隣接者立会いは、基本的に相手方の都合に合わせる
- 土日だけでなく、平日の朝から立会いが入ることも珍しくない
「役所に行く頻度は低い」という説明が現場とズレる理由
役所対応は「頻度が低いから何とかなる」と言われがちですが、現場ではそう簡単に割り切れません。
- 隣地所有者が不明で、登記から遡って探索が必要になることは実務上よくある
- 境界確定の初動で、役所に申請して資料(紙)を受け取る流れが必要になる
- 道路(市道・県道・国道等)に接する案件では、事前協議で来庁して現況説明が必要なケースもある(電話で済む場合もあるが、来庁が必要な場面も多い)
「オンラインでできる」は一部だけ(全部は置き換わらない)
「オンライン化が進んでいるなら、平日動けなくても何とかなるのでは?」という疑問もあります。
確かにオンラインで進む部分はありますが、現実にはオンラインで完結する範囲は限られます。
- 登記申請の一部はオンラインで進められる
- 一方で、現場確認、資料集め、打ち合わせ、関係者調整は対面・電話・役所対応が中心
つまり、オンライン化が進んでも「副業として回る」ことに直結はしません。
固定費と初期費用が重い(副業の件数では回収しにくい)
土地家屋調査士は、始めるための初期費用と、続けるための固定費がかかります。
副業の場合、件数が限られることが多いので、固定費の回収が難しくなりがちです。
毎月の固定費(目安)
- 測量機材・ソフトのローン/リース:月10万円〜(完済まで5年程度が目安)
- 土地家屋調査士会費:月数万円
- 事務所・車両関連:家賃・車両維持費などで月数万円〜
※地域差・事務所形態で幅はありますが、ざっくり言うと固定費は月10万円前後(+α)が現実ラインになりやすいです。
初期費用(私の場合:自宅開業前提)
- 賃料:0円(自宅開業)
- 車:0円(当初は自家用車を流用。3年目で買い替え)
- PC:0円(手持ちを使用)
- 消耗品:脚×2、ミニ脚×2、ターゲット、ドリル等(新品なら約50万円)
- 調査士会への登録費用:20万円〜(地域差あり)
車を流用したり、機材を譲ってもらうなど節約できる場合もありますが、現実にはCADやTSのリース代、申請ソフトの月額は避けづらいです。これらは仕事をするための必須コストです。
副業だと件数が増えにくい一方で、必要コストは先に発生します。
- 固定費:月10万円前後(+α)
- 変動費:交通・印紙・外注・消耗品(案件ごと)
- 税:利益が出れば当然かかる
目安:毎月15〜20万円程度の新規案件があって、ようやくトントン(赤字ではないだけ)。
生活費まで稼ぎたいなら、それ以上の案件が毎月必要ですが、会社員の副業では件数を安定させにくいのが現実です。
簡単な仕事ばかりは選べない(建物だけ、は基本的に難しい)
調査士業務には大きく分けて、建物の登記と土地の登記があります(それぞれ測量を含みます)。
建物の登記は、土地に比べると現場作業が少なく、道具も比較的少なく済みます(レーザー距離計やメジャーで対応できる場面もあります)。
「なら建物の登記だけ受ければいいのでは?」と思うかもしれませんが、基本的には難しいです。
理由は、土地家屋調査士の仕事の多くが紹介や取引関係(信用)で回ってくるからです。
- 取引先(司法書士・行政書士・不動産会社・ハウスメーカー等)は「連絡が取れて、早く、確実に進む人」に回しやすい
- 重い案件(手間がかかる案件)にも対応できる人ほど、継続的に依頼が回りやすい
- 「土地は断るが建物だけ欲しい」という姿勢だと、入口(取引)自体が作りにくい
「信用」の中身(紹介が回る条件)
「紹介が多い」と言っても、紹介は偶然ではなく、信用の積み重ねで起こります。
- レスポンスの速さ
- 納期の速さ
- 連絡のまめさ
- 実務レベルの高さ(難しい案件でも完遂できるか)
逆に言えば、どれかが崩れると関係は簡単に崩れます。断りすぎるのも同じで、断りが続けば「次」が来なくなることがあります。
仕事内容や報酬相場の現実については、こちらに詳しく書いています。
土地家屋調査士は「副業受託」は難しいが、兼業はできる
ここまでの内容を整理すると、会社員が週末だけで受託して稼ぐ「副業モデル」は、かなり厳しいという結論になります。
- 平日対応が必ず挟まる(有休や平日休みでは足りない)
- 固定費が重く、件数が少ないと回収しにくい
- 仕事は信用と取引で回りやすく、制約がある副業は入口が弱い
士業との兼業なら「セット提案」がしやすい
ただし、例外があります。本業が士業(行政書士・司法書士など)で、土地家屋調査士とセットで回せるケースです。
- 行政書士の場合:農地転用などの手続きと、地目変更登記
- 司法書士の場合:相続登記などと、建物滅失登記
このように、相談の入口が別にあり、流れの中で調査士業務につなげられる場合は「副業」ではなく兼業として成立しやすいです。
平日に動ける働き方なら成立しやすい(ただし経験は別問題)
会社勤めの「副業受託」は難しくても、フリーランスや自営業など、平日に動ける働き方なら成立しやすくなります。
ただし、現場経験がない状態でいきなり測量を回すのは簡単ではありません。ここは注意が必要です。
兼業禁止?(検索者が混乱しやすいポイント)
- 「兼業禁止」という言葉は、法律上の専業義務の話、勤務先の就業規則の話、職務倫理(名義貸し等)の話が混ざりがちです。
- 少なくとも「会社員の副業受託が難しい」理由は、禁止条文があるからというより、実務の性質(平日対応・信用・責任)による部分が大きいです。
- 一方で、名義貸しのような形は論外です(倫理・懲戒の観点でもリスクが高い)。
「現場や立会いは補助者に任せて、自分は営業だけ。最後に自分名義で提出すればいい」——こう考える人もいます。
ただ、このやり方は監督や判断まで丸投げになりやすく、結果として名義貸しに近い状態と見られるリスクがあります。
短時間で稼げるように見えても、トラブルが起きた瞬間に説明責任が重くなるので注意してください。
短時間で回そうとするほど、かえってリスクが上がります。現実的には次のルートの方が堅いです。
雇われ(使用人土地家屋調査士)という現実ルート
「副業受託」は難しくても、現実的なルートとして事務所勤務(雇われ)があります。
- 将来独立したい人が、まずは事務所で実務を身につける(この動線は現実的)
- 即戦力になれるほど実務経験があると、待遇面でも交渉しやすい
- 資格を持ったうえで顧客を連れて来られるタイプは、職場での立場も強くなりやすい
- 受任や処理の運用(誰名義でどう回すか、インセンティブの有無など)は、事務所の方針・契約・ルールによって変わります
補助者としての副収入なら成立する?(ただし現場は甘くない)
「土地家屋調査士として受託して稼ぐ」のは難しくても、補助者として関わる形なら可能性があります。
単発バイトが求められる典型(平日昼間・現場要員)
- 単発で人が欲しい場面は、基本的に平日の昼間になりやすい
- 内業は回せても、現場は二人いないと測れない場所がある
- そのため「単発=現場要員」の色が濃くなりやすい
雇う側の3パターン(実態)
- 経験者を雇いたい:理想は器械手。TS操作ができる経験者が最も助かる
- 未経験でも育てたい:ある程度は教えるが、週末だけでは上達が遅くなりやすい
- 未経験でも良いが教育はしない:その場限りの助っ人。スキルアップを前提にしない
補助者は体力勝負になりやすい
- 「簡単な作業だけ」とは限らない(現場で動けることが前提になりやすい)
- 季節によっては過酷で、休日に体を休めにくくなる
結論:会社員の「副業受託」は難しい。現実的なのは3つのルート
この記事の結論(先に固定)
- 会社員が「週末だけ受託して稼ぐ」副業は、ほぼ成立しません(平日対応が必ず挟まり、スケジュールが回らないため)。
- オンライン化は一部で進んでいますが、現場・資料・調整が残る以上、土日だけで完結しにくいのが実情です。
- 固定費・初期費用が重く、副業の件数では回収が遅くなりがちです。
あなたが取るべき現実的なルート
- ルートA:雇われ(事務所勤務)で経験と収入を作る
- ルートB:士業との兼業で入口を作る
- ルートC:補助者として副収入を得る
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「副業で稼げるか?」の答えは、前提(平日稼働できるか/取引の入口があるか/固定費を回せるか)で変わります。
会社員の副業受託にこだわるより、現実的に続く形(雇われ・兼業・補助者)から組み立てた方が、安全に前へ進めます。
まずは、自分がどのルートに乗れるか(平日に動けるか/紹介の入口があるか/現場に出られるか)を整理してみてください。

